HOME > HIV診療における外来チーム医療マニュアル > 第2章 チームで支援するHIV外来診療
服薬開始時期についてはガイドラインが参考になる(41ページ参照)。体調の変化を感じていない患者が服薬開始をなかなか納得できない場合もあるが、現在の抗HIV薬開始の基準は日和見感染症の発症防止からさらに長期予後の改善も見込んだものへとシフトしてきていること、以前にくらべ服薬が容易となっていることから、服薬開始が適当と考えられることなど、服薬する方がメリットがあることを説明する。服薬の意志がなかなか固まらない場合は、阻害要因についても話し合うが、カウンセラーへ対応を依頼することも検討する。薬剤師に抗HIV薬の説明(予想される効果や副作用)や服薬時間のシミュレーションを依頼したり、薬剤師と協力し、患者の病状に合った抗HIV薬の選択や、他に服用している薬剤との相互作用についての評価も行う。ソーシャルワーカーに費用負担軽減のために利用可能な制度についての案内などを依頼する。
抗HIV療法の開始にあたりに医師が考慮しておくべきことに、免疫再構築症候群がある。服薬開始によって免疫機能の再構築の過程で、免疫再構築症候群と呼ばれる症状が起こり日和見感染症が一時的に悪化する可能性がある。そのためにも抗HIV薬開始前に日和見感染症の精査と治療を行っておく。治療開始前に病原体の量を減らしておいたほうが免疫再構築症候群が起こりにくいとの考えもあるためである。例えばニューモシスチス肺炎では治癒してから、クリプトコッカス髄膜炎で導入療法が終了してから、結核や非抗酸菌症ではこれらの治療を1~2ヶ月先行させてから抗HIV療法を始めることが一般的である。
CD4陽性リンパ球数が200/μL以上の場合は日和見感染症はみられない場合が多いが、CD4陽性リンパ球数が200/μL未満の場合は発症している可能性があるため、とくに発熱など患者の自覚症状がみられる場合は、必要があれば精査を行い、日和見感染症がないことを確認する。
精査で日和見感染症が見られなくても発熱がみられる場合、抗HIV薬を開始することによって解熱し、発熱はHIV自体の症状であったと思われる例も経験する。
B型肝炎も免疫再構築症候群によって悪化する可能性があるため、合併している場合は、ツルバダRなどを用い最低2剤以上の抗HBV効果のある薬剤を含むメニューを選択している必要がある。
なお毛嚢炎や尖圭コンジローマなども免疫再構築症候群による悪化の可能性があるが、悪化時の対処で済むので、これらの治療のために抗HIV薬を遅らせる必要はない。
患者には、免疫再構築症候群によって既知の日和見感染症の悪化もしくは潜伏している感染症の顕在化が起こる可能性があること、その場合はそれらの治療が必要となることを説明しておく。
患者が積極的に治療方針の決定に参加し自らの意思で服薬を開始し、継続できるように関わっていく。患者の最も身近な医療者である看護師はチームメンバーと共に患者の意思決定のための支援を行っていく。服薬に関する知識の説明や薬の実物を提示したり、服薬スケジュールを患者と共に立案しシュミレーションを行うなど薬剤や治療を身近にイメージできるようにする。病気の進行、治療、経済的問題など患者の不安や疑問を把握し、解決できるように他部門との調整を行い十分な情報提供を行っていく。服薬継続のために身近な理解者を得ることも一つの方法である。患者が、家族や友人などへの病気を伝える場合には、病気の理解への情報提供を行い、支援の協力依頼を行う。
医師から指示された組み合わせに応じて、処方内容に沿った服薬スケジュールを立て、ライフスタイルに合わせた服薬が可能であるかを確認する。決してスケジュールを患者に押しつけるのではなく、お互いに検討することで選択と決定は患者に委ねることがポイントである。医師から示されたメニューが実行できないと思われる場合や、検討する時間が必要と判断すれば、その旨を医師に連絡し、処方内容を再検討するなど医師と連携して処方の提案や処方設計を支援する。
服薬開始までに時間があれば、患者に服薬時間のシミュレーションを提案する。また患者が現在服用している薬剤を聞き取り、抗HIV薬との相互作用の確認を行う。
(3)服薬支援参照(50ページ)
(4)服薬阻害因子の軽減参照(50ページ)
(5)ライフスタイルにあった服薬参照(51ページ)