HOME > HIV診療における外来チーム医療マニュアル > 第2章 チームで支援するHIV外来診療
④ソーシャルワーカーの役割
| 「障害」ということの受け入れ |
| 制度利用の意思 |
| 本人が手続きを行う能力・態度 |
| 家族など、キーパーソンの存在の有無 |
| 世帯状況と告知状況 |
| 役所担当者の対応能力 |
| 他の制度の利用についての確認 |
| 連絡方法、書類取り寄せ方法、など確認 |
| 書類の確認 |
| 役所窓口への連絡 |
| 病院医事との連絡調整 |
| 申請方法、書類受け渡し方法など確認 |
内服開始となれば医療費が高額となるため、患者の多くが医療費の助成制度を利用する。しかしながら、患者にとって制度の利用は「目的」ではなく「手段」である。内服を開始し継続するために課題だと思われる心理的・社会的問題が何であるのかをアセスメントし、その解決を図ることこそが重要であり、助成制度の手続きをすれば良いということではない。
制度の利用に際しては、患者自身がメリットとデメリットを把握し、主体的に選択することが重要である。制度利用に加え薬剤の組み合わせなど、さまざまなことを選択しなければならない時期になるが、これからの内服継続を患者自身が選び決定をすることを実感する大切な過程だと考える。
制度利用においては、患者が手続きを行う役所窓口の対応と手順と時間経過を、患者と共に確認し、病院事務と会計の手順など調整する。
また、自立支援医療の受給者証には時として「抗HIV療法」など明記されることがあるため、そのことを患者がどう受け止めるのか確認し、必要に応じて役所に配慮を求めることが望ましい。
身体障害者手帳は患者のプライバシーに配慮して、郵送あるいは代理人による申請が認められている。配慮が必要な場合には自立支援医療や障害者医療についても同様の対応ができるよう役所との交渉窓口となることも必要になる。
同時に、長期にわたり利用する制度であるため、患者自身が病院任せとせず、自己管理できるように取り組むことが重要である。確認と検討の結果、いつから患者が内服可能だと判断をしたのかをチームで共有し、処方開始時期の決定に反映する。
⑤カウンセラーの役割
服薬を開始することを了解しつつも、なかなか服用に至らない場合や、服用に不安や迷いを表明されることもある。服薬しようという意思と同時に迷いへの思いや行動にも関心を払い、服用にまつわる心理状態を患者自ら医療スタッフに表出できるように支援する必要がある。同時に、服用する/しないという迷いから、決断することをゴールにするのではなく、それを契機に、患者の思いや考えを丁寧に聞き、フィードバックを行っていくことで、主体性のゆらぎに共感しつつ、その回復を目指す。
また、服用することが一生続くという思いや、服用し続けることができるのかといった自分への自信のなさ、さらには周りのスタッフや自分自身が労力を割いてまで自分が生きていく意味があるのかといった迷いが表明される場合もある。そのような心理状態は、主体性を越えて病気の進行や治療が進んでいくなどの苦痛や苦悩のあらわれといえる。つまり、アイデンティティやスピリチュアルな苦悩など自らの根源的な問いでもある。さらに、うつや認知機能の障害など精神症状が背景にあることもあり、心理アセスメントや心理療法を提供したり、精神科にコンサルテーションを依頼するなども考慮に入れなければならない。カウンセラーは、迷いに付き添いつつ、患者自身がその迷いを医療スタッフに表明できるよう支え、医療スタッフとの関係を支援していくことも肝要である。
コラム 行動を変えることはたやすくない!
一般にある行為を遂行するには、①その行為ができるという感覚と、②その行為でどんな結果が得られるかという予測に加え、③その行為を行う技術を持ち合わせ、④状況がそろったときに実践に移されると考える。たとえば、決まった通りに服薬できないという行為は、服薬するという行動が学習されていないか、もしくは誤った学習がなされている、または、その行為を遂行できる感覚が乏しい、服薬した結果のメリットとデメリットを天秤に掛け、デメリットを多く予測してしまっているということが考えられる。
よって、服薬行動を支援するために、患者本人が、服薬することのメリットやデメリットをどのように予想しているのか、服薬し続けていくことができるというある程度の自信をもっているのか、服薬を続ける状況や環境にあるのかなどがポイントになるであろう。予想や自信、認知と行動力は、患者本人の独特の思考パターンや経験、感情によって左右される。そのような場合、正しい情報を得る、認知や思考パターンを再検討する、予測されるメリットとデメリットへの対処法を用意しておくといったことが服薬行動を支援することになるであろう。
具体的には、薬にまつわる思いや経験、感情を丁寧に聞き、理解していくことをまず心がけ、患者個々人の生活パターンや思考パターンに応じ、服薬スケジュールを一緒に考えていくことが大事である。ときには、他のさまざまなスケジュールで服薬している例や工夫していく点などを示しながら、“自分も飲める”といった思いや見通しが持てるように接していくこともよい。なお、そのような話し合いのなか、予想を上回る不安や心配、戸惑いを示されたり、なかなか修正できない思いや思考パターンが観察されたりする場合には、1人の医療者が抱え込むことを避け、カウンセラー等との連携を考慮する。
(7)既往症・合併症への対応
52ページ、①医師の役割の項を参照