厚生労働行政推進調査事業費補助金(エイズ対策政策研究事業)
HIV感染症及びその合併症の課題を克服する研究班

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HOME > HIV診療における外来チーム医療マニュアル > 第4章 チーム医療に役立つ資料集

資料2)服薬における患者と医療者のコミュニケーション事例

抗HIV薬の服薬は患者の自己決定を尊重する必要がある。1日1回の内服薬があった場合、「このお薬は24時間おきに、食後に服用するとお薬の十分な吸収が得られる薬剤ですが、あなたの場合どのようになりそうですか」などと、服薬時間を患者自身が決定できるよう言葉を投げかける。医療者側から朝食後に服用することを指示された患者が、たとえば朝食を摂れずに服薬できなかった場合、その服薬ができなかった責任の一端は、朝食後の服薬を指示した医療者にかかるとも言える。(援助的コミュニケーションについては資料1参照)

ケーススタディ<服用時間に関する対話のさまざま>

―服用時間のみを指示した望ましくない例1―

医療従事者(医)
このお薬は1日1回朝食後に、1回3カプセルを服用してください。
患者(患)
わかりました・・・(口頭ではわかったと言っているが、行動に移せるとは限らない)。

―服用時間のみを指示した望ましくない例2―

このお薬は1日1回朝食後に、1回3カプセルを服用してください。
朝食はとらないのですが、食事はとらなければなりませんか。
はい。お薬の吸収が悪くなるので、食事後の服用が必要です。朝、軽く食事をとることは出来ませんか。
難しいですね。朝は時間もないし、急いで支度をしてあわただしく出かけますから。
少し早めに起きることは出来ませんか。
昔から朝は弱くて…
では、昼食後、若しくは夕食後に服薬することは出来ませんか。
仕事の関係で、昼食や夕食の時間はまちまちです。友人と一緒に食事をとることもあるので夕食後は避けたいですね。食事の時間がある程度一定しているのは、朝食後位ですね。
仕方ありませんね。では前の日に、朝さっと食べられるものをコンビニで何か買っておいて、薬を飲んでみてください。
わかりました・・・(口頭ではわかったと言っているが、行動に移せるとは限らない)。

―服用時間の自己決定を尊重した望ましい例―

このお薬は約24時間おきに、食後に服用するとお薬の十分な吸収が得られる薬剤です。お薬を服用されるとすると、どのようになりそうですか。(open questionの活用)
薬の飲み方というのは融通がきくのですか。決まった飲み方をしなくてもいいのですか。
ええ、十分な効果を出せるような飲み方であれば問題はありません。
私は朝食をとらないのですが、もし、朝食後に薬を飲むとすれば、食事はとらなければなりませんか。
はい。お薬の吸収が悪くなるので、食事後の服用が必要です。(肝要な点は明確に伝える)
そうですか。どうしても食事をとらなければならない薬なのですね。
はい。薬の効果を最大限に引き出すためには必要ですね。不十分な服薬方法をとると、薬が中途半端に吸収されてしまいます。そのような状態が長く続くと、十分な血中濃度が得られない結果、薬剤耐性を起こす可能性も否定できません。(肝要な点は明確に伝える理由の説明をする)
どうしても食べなければなりませんか・・・。(沈黙が続く)(沈黙の間の待っている姿勢が問われる)昼食後や夕食後に薬を飲むことも考えられるのですが、仕事の関係で、昼食や夕食の時間はまちまちです。また、友人と一緒に食事をとることもよくあるので、出来れば昼食後や夕食後は避けたいですね。朝食後に薬を飲んでしまえば、その後は仕事に集中できるような気もします。食事の時間がある程度一定しているのは、朝食後位ですし。(患者の言葉と自己決定を待つ姿勢を持つ)
食事をとることがとても大変なのですね。(患者の感情に対し共感的理解を示す)
食事はどの程度食べればいいのでしょうか。
胃酸が十分分泌されれば、薬の吸収は十分行われます。軽食(357kcal,脂肪8.2g,蛋白質10.6g)での服薬で十分な吸収が得られたとのデータがあります。6枚切りのトースト1枚にマーガリンを塗った場合、250kcal,脂肪6g,蛋白質11gとされています。(例示の活用)
その程度でいいんですか。じゃ、これに牛乳でも飲めば十分ですね。インターネットのカロリー計算サイトなどを利用して、次の受診までにちょっと考えてみます。

―服用方法を指示した望ましくない例―

母親と一緒に暮らしています。母にはまだ病気のことは話していません。朝食の時は母親と一緒にいることが多いので、食後に服用するとなると、薬を飲むところを母に見られてしまうと思います。
薬のことをビタミン剤だとかサプリメントだと説明してみるか、説明が難しいのなら、お母さんに見られないよう、リビングに薬を隠しておくことは出来ませんか。(例示の活用)
難しいですね。母は薬のことに、人一倍興味をもっています。母も薬を飲んでいるのですが、自分が飲んでいる薬のことは、何かといろいろ調べてきていますね。薬を隠すことも難しいと思います。
朝食後に別室で薬を飲むことは出来ませんか。(closed question)
朝食をすませるとそのまま着替えて出勤しますから・・・
朝食後の服薬は難しそうですね。それでは、人に見られないで服用できる食事の時間を考えてみましょう。

―例示を利用した望ましい例―

母親と一緒に暮らしています。母にはまだ病気のことは話していません。朝食の時は母親と一緒にいることが多いので、食後に服用するとなると、薬を飲むところを母に見られてしまうと思います。
お母さんに服薬を見られてしまう心配があるのですね。それはご心配ですね。(共感的な応答)病気を家族に知らせずに服薬を続けておられる患者さんは、たくさんおられます。薬のことをビタミン剤だとかサプリメントだと言って説明しておられる患者さんや、リビングにこっそり薬を隠しておられる患者さんもおられます。(例示の活用)
皆さん苦労しておられるのですね。うちの母は薬のことに、人一倍興味をもっていますので、サプリメントだと言ってもすぐに嘘がばれてしまうでしょうね。
朝食後に別室で薬を飲んでおられる患者さんもおられます。(例示の活用)
食後すぐに飲む必要はないのですか。
出来れば食後すぐにお飲みいただく方がいいと思いますが、10分から15分以内なら問題はないと思います。(専門的知識の活用)
その位の時間なら・・・。私の場合、一度部屋に戻ってから薬を飲むことになるでしょうね。水を買って、部屋に置いておけばいいですね。今は朝食をすませてからすぐに出勤していましたが、出勤前に一度部屋に戻って、薬を飲んでから出かけられるかもしれません。出勤前に必ず部屋に戻る癖をつければ、飲み忘れもないでしょうし。一度考えてみます。

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