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HOME > HIV診療における外来チーム医療マニュアル > 第1章 HIV感染症の外来診療におけるチーム医療とは

4)チームとは

(1)チームとは

チームとは、各専門職種が、それぞれの専門性すなわち専門的知識と技能を最大限に発揮し、それらをチーム全体で統合することによって、個別の専門職では達成できない総合的な患者支援を実現する小集団のことである。各職種がチームを組むことによって、患者の持っている身体的、心理的、社会的、そしてスピリチュアルなどの多様なニーズに応えることができる。

(2)チームとなるために求められる力

チームを作りだすためには、以下の二つの力が求められる。

①専門力

まず、チームの基盤となるのは、各専門職の確かな専門的知識、判断、技能である。他の職種ではとって代わることのできない専門力をそれぞれの職種が身につけていることが必要となる。

②協働力

上記の専門力はチームの基盤である。しかし、上記の専門力だけでは、チームは実現しない。チーム実現のためには、さらに、以下のような協働力が必要である。

  1. 各専門職独自の知識、判断、アセスメント、技能を異なる専門職に説明し、伝える力
    自分たちの職種ではお互いにわかり合えても、異なった支援観や知識を持っている他職種にはわからないこともある。相手が理解しやすい言葉で自分たちの判断、アセスメント、技能をはっきりと伝える力が必要である。
  2. 他の専門職の知識、判断、アセスメント、技能を理解する力
    自分の専門性とは異なる他職種の専門性に関心を寄せ、理解しようとする姿勢が大切である。その姿勢に基づき、具体的な各患者支援でのやり取りや研修、マニュアルなどを通じて専門性への理解を深めていく。
  3. 異なる判断やアセスメントあるいは行動をすりあわせる力
    各職種は専門性に基づく判断やアセスメントを行っている。それらが各専門職で異なっている場合もある。その際に、一見異なってみえる判断やアセスメントの一致点あるいはお互いに譲り合える点を見つけられることが大切である。共に活動するためにお互いの具体的支援行動をすりあわせる力が必要である。
    上記のような協働力は、言い換えれば、職種間で行う様々なコミュニケーションを行える力とも言えるだろう。

(3)チームのためのさまざまな活動

多職種が参加し、実際に総合的な患者支援を行うチームができあがるには、その前段となる以下のようないくつかの活動のステップが必要である。これらの活動の積み重ねがその結果としてチームを生み出す。チームとは、多職種が共に働くことを目的に組織され、その組織化が継続的に維持され、すべての患者に対応している状態で、さらにこの組織が多職種間で広く認知されている状態を指す。

①打ち合わせと連絡

2つあるいは3つの職種がお互いに患者に関する情報、判断、支援方法や支援計画についての情報を交換しあう活動のことである。前もって連絡しあって集まる場合もあれば、その場で始まる場合もある。

②専門的助言

ある専門職が他の専門職にその専門性に基づく知識や判断を提供し、その専門職の活動を支援することである。

上記のような患者支援をめぐる単発で、偶発的な活動も多職種協働の確かなステップである。これらが積み重なることによって、さらに組織立った活動へと展開する。

③協力

ある特定の患者のある特定の問題を解決するために、多職種が活動を調整しながら、共に働くことである。協働は、まだこの患者あるいはこの問題にとどまっており、すべての患者にまで広がっていない状態である。

(4)チームが形成されるためのプロセス

各職種が専門性を十分に発揮し、それらの総和としての総合的な患者支援を行えるチームが形成されるまでには、多職種間で以下のようなプロセスが展開することが考えられる。

①開始期

各専門職は、お互いの知識、判断、アセスメント、技能をまだよく知り合っていない。そのためにチームにおけるお互いの役割や機能を理解していない。その状態では、どの職種がどの役割や機能を果たすのかについて十分な合意ができておらず、時に職種間で役割の取り合いが起こる。お互いの知識、判断、アセスメント、技能の理解が進めば、次第にチームにおける各職種の役割や機能が明確化し、このような役割葛藤は解決されてくる。

また、時には、知識、判断、アセスメント、技能の不十分な理解によって、過剰な期待が他職種に寄せられ、それらが実際に患者支援の場面で実現されないと、その職種に対する「低い」評価につながり、チーム形成を停滞させる場合がある。開始期には、お互いの役割期待とその結果に齟齬を生じた場合には、より丁寧なコミュニケーションをはかり、その齟齬の内容や原因を解決する努力も必要である。

②展開期

各専門職は、お互いの知識、判断、アセスメント、技能について現実的にかつ十分に理解し始めており、チームでのお互いの役割と機能を明確に意識できる段階となっている。その結果、患者支援においてお互いがお互いを補える存在となっている。この段階を通じて、しだいに包括的で体系的な患者理解が進んでくる。

③成熟期

各職種が専門性に基づきつつ、包括的で体系的な患者理解が可能となる。各専門職は自分たちの専門性を伝え、主張するだけでなく、他の専門職から他の専門性を学ぶことができる。そのために各専門職の役割の重複が起こるが、調整はスムーズにできる。各職種は、お互いの専門性の価値観、知識、判断、技能を尊重できる。

(5)チームの種類

チームにはいくつかの種類がある。

①マルチ型チーム(multi-disciplinary team)

治療に貢献するように、医師を中心として医師のリーダーシップの下、専門職が各々個別の目標と役割を設定し、それらを最終的に医師に集約していくチームである。命に関わるような疾患あるいは病状の場合に、時間の制約の中で、最大限にチームの機能をはたすためにはこのようなチームが適している。

②インター型チーム(inter-disciplinary team)

慢性疾患など、患者のニーズがより多様である場合に、その患者の多様なニーズに対応して、各専門職が支援を提供し、その専門性を重なり合うように発揮していくチームである。方針決定のプロセスは専門職同士の意見の交換や交渉による相互性が重要となる。リーダーシップは共同主導権である。

③トランス型チーム(Trance-disciplinary team)

各専門職が、互いの機能や役割を理解し、それらの機能や役割を臨機応変に開放したり、交代したりしながら、患者のケアを統合的に行う。

慢性化が進むHIV感染症では、その疾患の特徴から、上記のインター型チームがチームの基本的あり方と考えられる。ただし、インター型チームの定着が長期にわたることで、各専門職の機能と役割の理解が深化し、時にはトランス型チームへの移行もありえるだろう。また、疾患の状態変化によって、マルチ型チームのほうが適している場面もあるだろう。

(6)チーム形成を可能にする基盤

①チームメンバー間の関係とコミュニケーション

知識、判断、アセスメント、技能を交換し合うことで、お互いの理解が進み、また、患者支援の具体的経験を通じて、他職種への信頼が生じ、その結果、交互尊重が実現していく。このように多職種間のコミュニケーションとそれによって生み出される信頼、相互尊重はチームの基盤である。

②管理組織からの理解

各職種間のコミュニケーションだけでなく、チームが所属する機関やその機関内の専門職組織からチームの活動が認められていることはチームの様々な活動を支え、チーム形成に影響を及ぼす。専門職組織がチームへの参加を認めていることによってチームメンバーが時間をとったケースカンファレンスへの定期的な参加が可能になる。また、機関の管理組織がチームの存在を認めていることで、チームに参加する専門職の人員の配置や増員が可能となる。このような管理組織へのチーム理解の促進には、チーム自身からの働きかけが必要となろう。

③制度や国全体のシステムからの支援

患者の多様なニーズに応えるために、そのニーズに最も見合った専門性を持つ専門職が院内にいない場合、その専門職を院内に配置する新たな制度が求められる。また、診療報酬など国全体のシステムからの支援も重要である。これらの支援の重要性を認識するとともに、チームを実現するためには、時にこれらのシステムへの働きかけが必要であろう。

(7)チームの状態を振り返るための視点

日々の診療の流れの中で、チームは上述のように適宜変化をしながら患者一人ひとりに応じて対応していく。柔軟で機能的なチームを維持するためには、下記表1のような視点で振り返ってみるのも一つの方法である。

表1 適切なチーム状態を維持するためのチェック表
質問項目 3
している
2
どちらでもない
1
していない
①各職種間で必要に応じて、患者支援に関する情報や判断などを連絡し合って、交換しているか?      
②多職種が集まるカンファレンスなどが必要に応じてまたは定期的に開かれているか?      
③自分たちのチームに対して、管理組織や他の専門職、専門職組織からの理解があるか?      
④自分の病院では、多様な専門職が患者支援にあたっているか?      
⑤チーム間で、カンファレンス以外にも、お互いの情報を交換する方法を持っているか?      
⑥自分は、他職種の専門的な活動、判断、考え方を理解しているか?      
⑦自分は、他職種に対して、自分の専門的な活動、判断、考え方を説明しているか?      
⑧多職種間で、異なった立場の判断や考え方も正直に交換しているか?      
⑨自分のチームでは、患者支援の方針について、話し合って決めているか?      
⑩自分は他のチームメンバーの判断や技能を信頼しているか?      
⑪チームでは、自分の判断や考え方を自由に発言しているか?      
⑫チームでは、意見や方針の対立があっても、努力して合意に至っているか?      

チーム状態の振り返りチェック表

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