V初回治療に用いる抗HIV薬の選び方
3.副作用に関する配慮
以前の抗HIV薬に比べ、近年に開発された薬剤は副作用の頻度は格段に減少した。しかし、軽微なものも含めると「どの組み合わせを選んでも何らかの副作用が生じる」というのが実際のところである。したがって、どの組み合わせを選択しても何らかの副作用が生じうるということを前提のもとに、個々の患者の臨床症状、検査所見、性格、職業、体質を考慮し、それらが予想される副作用とバッティングしない組み合わせを選ぶのがポイントである。例えば、EFVはめまいなどの精神神経症状が強いため、精神疾患の病歴のある患者や職業上危険な作業を行う患者などには慎重に投与する、などの配慮が必要である。表V-5は主な抗HIV薬について、発生頻度の比較的高い副作用と稀だが重篤な副作用に分けてまとめたもので、治療開始時に必ず説明をしておく必要のあるものである。個々の薬剤の副作用の詳細については、各薬剤の添付文書を参照していただきたい。
予期せぬ(説明を受けていない)副作用が出現すると、患者は不安になり服薬を中断しがちである。予想される副作用について事前に十分に説明を行えば、多くの副作用を克服しARTにうまく「のせる」ことができる。また、副作用が生じた場合に外来で頻繁に相談できる体制をとった上でARTを開始することが望ましい。仕事に差し支えが生じないように休みの日から服薬を開始することや、仕事の比較的忙しくない時期に開始する工夫も大切である。また、副作用が軽減しない場合は積極的に他の薬剤への変更を考慮し、服薬率の低下を防ぐことも必要である。
表V-5 主な抗HIV薬の副作用
| 抗HIV薬 | 比較的頻度の多い |
稀(または頻度不明)だが |
|---|---|---|
| 3TC | 下痢、 |
乳酸アシドーシス |
| ABC | 脂質異常、 |
過敏症、 |
| AZT | 嘔気、 |
乳酸アシドーシス |
| FTC | 下痢、 |
乳酸アシドーシス |
| TDF | 悪心、 |
乳酸アシドーシス、腎障害、骨粗鬆症 |
| TAF/ |
悪心、 |
乳酸アシドーシス |
| EFV | めまい、 |
|
| NVP | 皮疹、 |
肝障害 |
| ETR | 下痢、 |
|
| RPV | 頭痛、 |
肝障害、QT延長 |
| ATV | 高ビリルビン血症、 |
尿路結石 |
| FPV | 下痢、 |
|
| LPV/r | 高脂血症、 |
|
| NFV | 下痢、 |
血糖値上昇 |
| DRV | 下痢、 |
|
| DRV/c | 下痢、 |
|
| RAL | CPK上昇 | |
| EVG/cobi/TAF(TDF)/FTC | 悪心、 |
|
| DTG | 悪心、 |
過敏症 |
| BIC | 悪心、 |
|
| MVC | 悪心、 |
表V-6 服薬率を保つための工夫
- <服薬開始前~開始後1ヶ月>
-
- 初回治療を成功させることの重要性、服薬率の重要性を説明する
- 1日に内服する薬剤の実物を見せ、錠剤数・回数・食事制限について納得して頂く
- 予測される副作用の種類、出現時期、経過を説明する
- 体調がおかしければいつでも電話で相談可能であることを教える
- <服薬後1ヶ月以上してから>
-
- 受診ごとに何回飲み忘れ、あるいは時間のずれがどのぐらいあったかを聞く
by 医師、看護師、薬剤師 - 副作用に関する問診
QOLに影響するようなら他剤への変更を考える - 飲み忘れる原因を分析し、工夫を考える
- 外出時薬を持って行くのを忘れる
- 飲酒して帰宅すると、内服するのを忘れて寝てしまう
- 内服したかどうかわからなくなる
- 休日昼まで寝ていて朝の薬が飲めない、など
- 受診ごとに何回飲み忘れ、あるいは時間のずれがどのぐらいあったかを聞く