XVI医療従事者におけるHIVの曝露対策

6.曝露後の抗HIV薬内服

 内服開始前には、最低限以下の3項目は確認が必要である。

  1. 女性医療者では妊娠かつ妊娠可能性の確認
  2. 慢性B型肝炎のある医療者では、抗HIV薬の選択において注意が必要である
  3. 腎機能に問題のある医療者では、抗HIV薬の選択において注意が必要である

 HIV曝露後予防の具体的方法は、2013年のCDCガイドライン6)では第1推奨薬は以下の2剤に単純化されている(表XVI-1)。

  1. アイセントレス®(Raltegravir:RAL)1錠400mg、1回1錠、1日2回
  2. ツルバダ®配合錠(Truvada:TDF/FTC)1錠、1回1錠、1日1回
表XVI-1 HIV曝露後予防のレジメン
(1)第1推奨
アイセントレス®(RAL)+ツルバダ®配合錠(TDF/FTC)
≒アイセントレス®(RAL)+デシコビ®配合錠HT(TAF/FTC)(※1 妊娠が否定できる場合、妊婦や妊娠の可能性がある場合でもTDF/FTCがすぐに入手できない場合)
  • アイセントレス®は400mgを1日2回内服する(1日2錠)。なお、アイセントレス®は600mgの錠剤もあり、1日1回2錠(1200mg)内服という選択肢もあるが、基本は400mg錠の1日2回内服とする。
  • ツルバダ®配合錠、デジコビ®配合錠HTは1日1回1錠を内服する。
  • 上記薬剤は食事とは無関係に開始可能である。
(2)第2推奨
テビケイ®(DTG)※2+ツルバダ®配合錠(TDF/FTC)
  • ツルバダ®配合錠、デジコビ®配合錠HT(※1)は1日1回1錠を内服する。
  • 上記薬剤は食事とは無関係に開始可能である。
    ※2テビケイ®よりアイセントレス®が妊娠の可能性のある場合には望ましいが、アイセントレス®がすぐに入手できない場合にはテビケイ®も可能。
  • テビケイ®は妊婦が使用した場合には新生児の神経系の障害のリスクが増える可能性が報告された。そのため妊娠または妊娠の可能性のある医療者への使用は選択されてはならない。
その他の第2推奨レジメンは、「第V章 初回治療に用いる抗HIV薬の選び方」に準じる。
(3)専門家との相談があったときのみ使用して良い抗HIV薬
  • ザイアジェン®(Abacavir; ABC)
    注:トリーメク®配合錠内服の経験蓄積と日本人でのHLA-B*5701 対立遺伝子の保有率の低さから、以前より上位の選択肢になりうると考えられる。
(4)以下の薬剤は、曝露後予防としては禁忌(または推奨されない)。
  • ビラミューン®(Nevirapine ; NVP)

 HIV感染者への治療においては、ツルバダ®(TDF/FTC)は基本的にはデシコビ®(TAF/FTC)に代替可能と考えられている。しかし、2021年1月時点でも曝露後予防内服として米国CDCは「ツルバダ®の代替薬としてデシコビ®が使用可能である」との見解は示していない。現実には多くの医療機関では採用薬としてツルバダ®はデシコビ®に置き換えられている。「デシコビ®配合錠」の添付文書では「デシコビ®配合錠」の妊婦への使用は禁忌ではない。米国保健福祉省治療ガイドラインでは「デシコビ®配合錠」の妊婦への使用は代替薬とされている14)デシコビ®妊娠初期の妊婦への安全性が確立していない15, 16)こともあり、現時点で第一選択として推奨する予防内服薬は、アイセントレス®+ツルバダ®の組み合わせである。ただし、妊婦や妊娠の可能性がある場合でも、ツルバダ®がすぐに入手できない場合にはかわりにデシコビ®の使用も許容される。妊娠(その可能性)が否定できる場合は、ツルバダ®をデシコビ®に変更してもよいと考えられる。デシコビ®配合錠(TAF/FTC)はHTとLTの2種類がある点に注意する(HTはTAF 25mg、LTはTAF 10mgを含有)。アイセントレス®と併用する場合は「デシコビ®配合錠HT」を用いる。デシコビ®はツルバダ®と同じく1日1回1錠であり、食事と無関係に内服可能である。

 ドルテグラビル(DTG、テビケイ®)は、多くの治療ガイドラインにおいて第1推奨薬として位置付けられ、治療薬としての効果は確立している。2013年の米国CDCの曝露後予防内服ガイドライン6)の発行時にはDTGは承認されていなかったため記載はないが、最新のヨーロッパの治療ガイドライン内には、TDF/FTC+DTGは代替薬として考慮しても良いと記載されている15)女性が受胎時にDTGを使用した場合に新生児の神経管欠損症(neural tube defects:NTD)が増える可能性が報告され、最終的にはDTG以外の抗HIV薬を内服していた場合と比較してやや高率であるものの統計学的有意差がないという結論に達した17-19)第V章参照)。飲みやすさ(1日1回1錠)や相互作用の少なさなどを考慮して、本ガイドラインにおいてはDTGを第2推奨薬として位置付けることとする。妊娠の可能性のある女性の場合にはアイセントレス®の方が望ましいが、アイセントレス®がすぐに入手できない場合にはDTGで開始することも考慮してよい。DTGはRALと比較し有害事象による中止例の多い可能性がある20)。日本では、関根らの報告21)によると269例のDTG使用例において精神神経障害合併8.9%(頭痛3%、迷走神経障害2%、異夢2%、睡眠障害2%)・消化器障害合併7.8%(下痢3%、悪心2%)・肝機能障害合併3.3%であり、副作用による中断は8例=3%(肝機能障害3例、消化器障害2例)であった。しかしHRD共同調査協議会の報告では、「テビケイ®+ツルバダ®配合錠」940例での精神神経障害合併率は1.7%、「トリーメク®」599例での精神神経障害合併率は1.33%と高頻度ではなかった22)

【被曝露者が慢性B型肝炎患者である場合】

 被曝露者が慢性B型肝炎患者である場合、理論的には抗HBV効果のない薬剤が望ましいが(内服終了後にHBVのリバウンドを生じうるため)、それはガイドラインが推奨する「キードラック1剤+2剤のNRTI」の組み合わせにはならない。専門家との相談が必要である。

【腎障害がある場合】

 腎障害がある場合には専門家との相談が必要である。

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