XIIIHIV/HCV共感染者での抗HIV療法

2.自然経過

(1)急性肝炎

 C型肝炎ウイルスに感染した場合、20~40%(平均25%)は自然治癒するが、残りは慢性肝炎となる17)。HIV感染症にC型急性肝炎を合併した場合のHCV排除率は4~26%と報告による差が大きいが、HIV非合併例に比べて低率である18, 19)。細胞性免疫不全がその大きな原因と考えられている20)。急性肝炎後のHCV排除にはNK細胞のIFN-γ産生能が影響を及ぼすことが報告されている21)

(2)慢性肝炎

 慢性HCV感染者の臨床経過は個人差が大きいが、16%が活動期を経て平均20年で肝硬変を発症し、その多くが肝癌を合併するとされている22)。一方少ないながら自然経過でHCVを排除できる症例もある。こういう症例はIL28B(IFN-λ3:肝細胞におけるInterferon Stimulated Geneの転写に大きな影響を及ぼす)のプロモーター領域にあるSNPが野生型であり、IL28Bの産生量が多い23)。ARTの導入例でも同様の報告がある24)

 米国のCHORUS (Collaborations in HIV Outcomes Research-United States) database, 2001によれば、平均39歳のHIV感染例の予後は、CD4数≧200/mLである場合には予測生存は32年、CD4数<200/mLの場合は10年と計算されている。また、1997年8月から2000年12月までに135人のHIV感染例が死亡しているが、その死因は約半数がAIDS関連(例えば、非結核性抗酸菌症、ニューモシスチス肺炎、サイトメガロウイルス感染症などの日和見感染症)であったが、残りの半数は非AIDS関連の死因であった(その約90%が肝疾患関連で、多くは慢性C型肝炎であった)25)。欧州からも同様の報告がある26)。即ち、少なくともARTが普遍的に享受可能な先進国においてはHIV感染例の死因の変化が起こり、HCV感染症が死因の多くを占めるようになっていたことがわかる。

 我が国においてもHIV感染例の死因は、日和見感染症から非AIDS関連疾患、特にC型慢性肝炎とその合併症へと変化してきた。本邦の血友病患者のサーベイランス結果によれば、1997年以前の肝疾患による死亡率は14%であるが、1997年以降では肝疾患による死亡率は29%に増えていることが報告されている。また、2006年の調査ではHIVとHCVが共感染した血液凝固異常患者の死因はその9割以上(120/129)が肝硬変、肝細胞癌であることが確認されている13)

 現在血液凝固異常患者の死因としては非AIDS指標悪性腫瘍、心血管疾患、自殺などが問題になってきているものの、現在も年間数名が肝硬変・肝細胞癌で亡くなっている。

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